認知行動療法について

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不眠症の治療法のひとつに「認知行動療法」と呼ばれるものがあります。ここでは、この「認知行動療法」についてご説明いたします。


不眠症の患者さんは、いつもの睡眠環境が不眠に条件付けられていること、あるいは、過度の緊張のために眠れないということがよくあります。


そのような望ましくない条件付けを解消したり、また心身の緊張状態を緩和することを目的にした療法が「認知行動療法」で、いくつかの種類があります。それぞれについて以下にて概略を解説いたします。


(1)刺激制御療法

正常な睡眠では、いつもの就寝時刻が近づいたり、寝室で横になると眠気が引き起こされ、そのまま自然に眠りにつけるものです。


ところが、ストレスなどが原因で一過性の不眠となったときに、就寝時刻や寝室などが眠れないことに条件付けされてしまうことがあります。


このような条件付けがなされると、就寝時刻が近づいたり寝室に入ったりすることがかえって眠りを妨げてしまい、不眠が長期化し慢性的な不眠症に至ります。このような不眠は「条件付け不眠」と呼ばれます。


条件付け不眠を治療するためには、眠りを妨げる条件反射を引き起こす刺激を取り去ることが大切で、それを目的にした療法のことを「刺激制御療法」といいます。


アメリカの睡眠研究家のリチャード・ブーティンによって、条件付き不眠症に対処するための「ブーティン式刺激抑制療法」が開発されています。これは、20~60歳までの不眠症の方に効果があるものです。


◇◆ブーティン式刺激抑制療法◆◇

・眠気を感じたときだけベッドに入る

・眠りとセックスのためだけにベッドを使う

・20分以内に寝付けなければ、ベッドから出てほかのことをする

・眠気を感じたら、またベッドに戻る(それでも寝付けなければ、また起きる)

・毎日同じ時刻に起きるように目覚ましをセットして、寝過ごさないようにする

・昼寝はしない



刺激制御療法は、とくに「入眠障害」と「中途覚醒」に効果があります(「入眠障害」、「中途覚醒」についての詳細は、「不眠・不眠症のタイプ」をご覧ください)。



(2)睡眠制御療法

不眠症を患っている方は、「一晩で8時間眠らなければいけない」、「少しでも長く眠らなければならない」と考えがちで、布団やベッドの中にいる時間を必要以上に長く確保することがあり、このことがかえって中途覚醒などの要因となるなど、熟睡感が得られないことにつながってしまいます。


「睡眠制御療法」というのは、睡眠時間を意図的に減らすことで床で過ごす時間がむやみに長くならないようにし、また断眠効果により眠りを深くするするというものです(睡眠時間を短くすると、眠りが深くなります)。具体的には、以下の要領にて行います。


◇◆睡眠制御療法◆◇

・2週間、実際に眠ることができた睡眠時間を記録し、それらの平均値を算出します。

・その平均値+15分を睡眠時間と設定し、起床時刻から逆算して就寝時刻を決め、それを守ります。

・設定した時間の90%以上眠ることができれば時間をさらに15分延ばします。

・反対に85%以下であったなら、過去5日間の睡眠時間まで減らします。

・このあいだ、日中、昼寝をしたり床に就いたりしないようにします。


このようにすることで、次第に布団やベッドでよく眠れるようになり、「布団で眠れない」といった望ましくない条件付けや不安が解消されます。



(3)筋弛緩療法

私たちは、就寝前にリラックスしている方が寝つきがよくなります。そのため、寝る前に全身の筋肉が緊張していると、このことにより入眠が阻害されてしまいます。


筋肉の緊張は、自分の意思で脱力させることで簡単に解くことができると思われるかもしれませんが、自分では筋肉の緊張を自覚していなくても、実際は緊張状態にあるということがよくあります。


筋肉は、相対的な緊張の変化はよくわかるのですが、絶対的な緊張はわかりにくいという性質があります。つまり、緊張していても、その状態を認識しづらいのです。そのため、自分は脱力していると思っていても、実は、力が入っているということがあるのです。


そこで、この筋肉の緊張を解くことを目的にしたものが「筋弛緩療法」と呼ばれるものです。


筋弛緩療法には、特定の部位の筋肉の緊張を解除するもの、ならびに全身の筋肉を順序だって弛緩させる「漸進的筋弛緩療法」があります。


漸進的筋弛緩療法は、アメリカの心理生理学者ヤコブソンが考案したものです。以下、漸進的筋弛緩療法の手順をご説明いたします。


◇◆漸進的筋弛緩法◆◇

1.いすにゆったりと腰掛け、目を閉じる

2.手を固く握りしめ、指先から肩まで腕全体に思いっきり力を入れる

3.力を入れた状態を3秒間ほど継続したら、瞬間的にぱっと力を抜く

4.この操作を首→肩→背中→胸→腹→大腿→下腿の順に繰り返す


体の緊張がとれていくことを味わうことが大切で、緊張しているときの状態と脱力しているときの状態との違いに意識します。


無理にリラックスさせようとする必要はなく、筋肉が緩むのを待っていれば、ひとりでに筋肉が緩むはずです。



(4)自律訓練法

「自律訓練法」とは、自分の身体に対して意識を集中したり、リラックスのために自己暗示したりすることを段階的に訓練するというものです。


全身の緊張を解放し、気持ちを落ち着かせることを自身でコントロールできるようトレーニングするもので、緊張や不安に起因する不眠症を抑える効果があります。


自律訓練法についてはたくさんの関連書籍が出版されていますので、詳しい手順などはそちらをご覧になってください。当HPでは、「自律訓練法、音楽療法と眠り」にて紹介しています。



(5)バイオフィードバック法

「バイオフィードバック法」とは、自分ではなかなか感じることができないほどの身体の変化を特定の機械を使って音や光などに変換することで身体の変化を捉えやすくし、それによって、身体の変化をコントロールしようというものです。


不眠症の患者さんは、筋肉が過剰に緊張していることが多く、これが不眠の大きな原因となっていることから、筋電図を使うことで筋肉の緊張を解くトレーニングを行うことが多用されています。


その方法は、筋電図の電極を前額などに取付け、筋肉の変化を音に変換します(筋肉の緊張が強ければ高い音、筋肉の緊張が弱ければ低い音など)。


これによって、自分の筋肉の緊張の状態が認識しやすくなり、筋肉の緊張を解くトレーニングを効果的に進めることができます。



(6)行動療法の組み合わせ

上記(1)~(5)の療法を組み合わせて取り入れることで、不眠解消の効果を高めることができます。また、薬物療法との併用も可能です。


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(管理用)