精神療法について
不眠症の中で大部分を占める「精神生理性不眠症」の患者さんは、不眠に対する不安や恐れによって、さらに不眠を引き起こすという悪循環に陥っています。
もともとの不眠のはじまりは、寝付けなくなるような何か大きなストレスになることがあったということが典型的です。ところが、この元々の原因がなくなっても不眠に対する過度の心配だけが残り、眠ろうとすると、かえって眠れなくなってしまうのです。
このようなことから、精神生理性不眠症の原因は、体の外部ではなくて、心の持ちようや考え方にあるといえます。
そのため、精神生理性不眠症を解消するためには、気持ちや考え方などメンタル面の改善をはかることが有効です。そのための方法が「精神療法」と呼ばれるものです。
精神生理性不眠症を患っている方は、真面目で神経質な方が多くいらっしゃいます(精神生理性不眠症は、以前は、神経質症性不眠症、あるいは神経症性不眠症と呼ばれていました)。
また、下記のような考え方を持ち、これらに過剰にこだわっていることがよくあります。
・一日の睡眠時間は最低8時間必要である。
・眠らないと大変なことになる。
・就寝後すぐに寝付けなくてはならない。
・睡眠薬を飲むと習慣化してやめることができなくなる。
以上のようなものは、適切な考え方ではなく、また過度に囚われる必要のないものです。
そこで、まずは、このような考え方は決して正しいものではないことを理解することからはじまります。すでにご説明しています「睡眠衛生教育」にも通じるものです。
精神生理性不眠症の方は、自宅の寝室で横になると眠れないものの、それ以外の時や場所では眠れるというように、いつもの環境が不眠に条件付けられていることもよくあります。
ところが、終夜睡眠ポリグラフ検査などで睡眠の状態を調べてみると、入眠までの時間の延長、睡眠効率の低下、覚醒回数ならびに覚醒時間の増加は見られるものの、患者さんの訴えほどは睡眠の状態は悪くないということがよくあります。
そのため、このような実際の検査結果を知ることで、安心感を得るということも精神療法のひとつです。
なお、これは、「あなたが思っているほど眠りの状態は悪くないから心配いらないです」といって、患者さんの訴えを軽く聞き流すということではありません。
客観的事実を伝えて、少しでも患者さんの不安や心配を軽減することが目的です。患者さんがつらい思いをしているのは事実ですから。
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