加齢による不眠

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高齢になると寝つきが悪くなったり、朝早くに目が覚めたりするなど、不眠の症状が現れる方が多くいらっしゃいます。ここでは、加齢に伴う不眠についてご説明いたします。


私たちの睡眠は、加齢とともに大きく変化します。子どもの頃や10代、20代では一般的に寝付きがよく、かつ深い眠りをとることができます。いわゆる「爆睡」ができるのもこの頃です。


30代になると、徐々に深い眠りがとれなくなっていき、爆睡することができなくなります。ただ、この変化は、まだほとんど自覚できない程度です。とはいえ、寝不足のときにまとめて休息をとって一気に疲労を回復するというようなことはできにくくなります。


40代以降になると睡眠に対する満足度が低下し、50代以上では睡眠障害を訴える人が多くなります。


そして、60代以上の高齢者になると、睡眠に以下のような特徴が現れる傾向にあります。

・寝付きが悪くなる(入眠困難)

・深い眠りがとれなくなり、眠りが浅くなる(熟睡困難)

・夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)

・朝早く目が覚める(早朝覚醒)、睡眠時間が短くなる

・眠りの時間帯が早くなる(早寝早起きになる)


若年者は、就寝後10分程度で浅い眠り(ノンレム睡眠の段階1、段階2)から深い眠り(ノンレム睡眠の段階3、段階4)へと移行し、段階4まで進むのに30分程度しか要しません。ノンレム睡眠の段階4が30分ほど続いた後、眠りが浅くなってレム睡眠に移行します。通常、このサイクルを一晩のうちに4、5回繰り返します。


一方、高齢者は、入眠まで40分ほど要します。しかも、ノンレム睡眠の段階4まで進まずに、段階2あたりをうろうろします。また、若年時には睡眠の後半にレム睡眠(浅い眠り)が多く出現していたのが、高齢になるとレム睡眠の出現が眠り全体の中で平均化していきます。つまり、若い頃に比べて深い眠りが減少してくるのです。


布団やベッドの中にいる時間に対する実際に眠っている時間の割合を「睡眠効率」と呼びます。30代ではこれが100%に近いのに対して、 高齢者になると約70%にまで低下します。寝床で横になっているとしても、若い頃のようには眠りにくくなるのです。


高齢者が眠れなくなることには、以下のようなさまざまな要因があります。


睡眠の必要量の減少
定年による退職などによって、一般的に高齢になると、若い頃に比べて日中体を動かすことが減る傾向にあります。そのため、消費するエネルギー量が少なくなり、このことで必要とされる睡眠の量が減り、睡眠時間が短くなります。

若年時に比較して一日の睡眠時間が減るのは自然なことです。睡眠時間が短くなっても日常生活において支障がないようでしたら、とくに心配する必要はありません。


一日の最高体温の低下
人間の体温は一日の中で変化し、もっとも低いのは起きる直前です。この頃から次第に体温が上昇し、夜、寝る前にピークを迎えます。そして、これ以降は、体温はだんだんと下がっていきます。

寝るときに体温が下がるのは、体温を下げることでエネルギーの代謝を抑制し、脳を休ませるためです。このときに、人間は眠気を感じます。

ところが、加齢に伴って、1日における最高体温が低くなります。そのため、体温を下げるのに要する時間が短くなり、これがもとで睡眠時間も減少する方向に進みます。


体温の日変動サイクルのズレ
高齢になると、一日の中での体温変化のサイクルが前にずれます(早くなる)。朝、体温が上昇するときに覚醒するのですが、サイクルが前にずれることで体温上昇の時間帯が早まり、朝早くに目が覚めるようになります。


メラトニンの減少
睡眠を促す働きがあるホルモンに「メラトニン」というものがあるのですが、高齢になると、メラトニンの分泌量が減少します。このことにより、夜、眠れにくくなります。

参考までに、メラトニンに関する詳しい説明は、「メラトニンについて」をご覧になってください。


頻尿
レム睡眠時に尿意を催すと簡単に目が覚めてしまい、中途覚醒につながります。


持病
高齢者は、眠れなくなったり眠りの持続を妨げたりする慢性的な病気にかかっていることが多くあります。たとえば、以下のようなものです。

・関節痛や筋肉の痛み : 痛みのため、眠れにくくなってしまいます
・前立腺肥大 : 頻尿になります
・認知症 : 錯乱や暗闇に恐怖を覚える症状(日没症候群と呼ぶ)を伴うこともあります
・うつ病 : 高齢者に多いうつ病は、不眠の原因になります


睡眠障害
加齢とともに多く見られるようになる睡眠障害が不眠の原因になります。高齢者によく見られる睡眠障害には、「睡眠時無呼吸症候群」「むずむず脚症候群」「周期性四肢運動障害(睡眠時ミオクローヌス症候群)」があります。とくに、睡眠時無呼吸症候群は、60歳以上の高齢者の約2割に見られるといわれています。

これらの睡眠障害が疑われる場合には、早めに専門の医師の診断を受け、適切な対処を行うことが大切です。


過剰な昼寝
退職で会社に行くことがない、また生活上の刺激が少ないなど、昼寝ができやすい環境にあるため、ついつい日中眠ってしまいがちになります。長い昼寝をすると、夜の寝つきの悪さにつながります。とくに、夕方に寝ると、夜、なかなか寝付けなくなってしまいます。


寝室の環境が適切でない
眠りが浅くなるために、若い頃は気にならなかったようなことが気になるようになります。たとえば、寝具の状態(寝心地の悪さ)、騒音、光などです。


カフェイン摂取
高齢になると、若い時よりも、カフェインの覚醒作用の影響を受けやすくなります。詳しくは、「午後のカフェイン摂取をひかえましょう」をご覧になってください。


薬の服用
年をとると薬の作用が強くなり、悪夢を見たり、眠れなくなったりすることがあります。反対に、過度の眠気に襲われることもあります。現在服用中の薬によって眠りに対して好ましくない影響が生じている場合には、担当の医師に相談することが必要です。


配偶者との死別
配偶者との死別は精神面に非常にダメージが大きく、不眠の原因になることが少なくありません。



以上のように、高齢になるほど眠りを妨げる要因が多くなるのは確かです。ただ、性別による違いがあり、深い睡眠が減るのは男性に多く、女性は若い頃と変わらず深く眠る方も多くいらっしゃいます。また、高齢であっても、日中活発に活動する人は比較的深い眠りを多くとることができます。


とはいえ、加齢に伴って睡眠は変化するものであり、高齢の方が若い頃のようにぐっすりと眠れなくなるのは、ある程度は仕方のないことです。しかし、適切な対処を行うことで、睡眠の状態をよくすることは可能です。これについては、「高齢者の眠りを改善する方法」をご覧になってください。


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