睡眠導入剤(睡眠薬、睡眠剤)の種類と比較

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睡眠薬、睡眠剤と呼ばれることもある睡眠導入剤ですが、これには非常にたくさんの種類があります。ここでは、現在、日本国内でよく使用されている睡眠導入剤の種類を比較・整理しています。


睡眠薬は適切な用い方をすれば不眠にうまく対処できるものですが、以下のような心配や不安をお持ちの方がたくさんいらっしゃるようです。

・副作用があるのではないか
・一生飲み続けなければならないのではないか
・だんだんと効能・効果が薄くなり、量を増やさなければ作用しなくなるのではないか


確かに、かつて使われていた睡眠薬の中には、大量に飲むと命の危険にかかわるもの、副作用の強いものがありました。そのため、睡眠薬服用に対して怖いと感じるのは仕方がない面はあります。


ただ、そのような睡眠薬は「バルビツール酸系」といわれるもので、現在広く利用されている「ベンゾジアゼピン系」のものとは性質の異なるものです。


<バルビツール酸系の睡眠薬>
脳全体の働きを低下させることで眠りを誘う。麻酔薬の一種であり、摂取量が多すぎると命に関わる場合もあり。


<ベンゾジアゼピン系の睡眠薬>
感情を安定させ、覚醒中枢への刺激を減少させる。その結果、睡眠中枢の働きが強くなり眠気を感じるようになる。


現在のベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、医師の指示に従って適切な方法で飲んでいる限り、大きな問題になることはありません。


なお、現在多く利用されている睡眠薬は「ベンゾジアゼピン系」ですが、「非ベンゾジアゼピン系」という新しいタイプの睡眠薬があります。



睡眠薬を飲むと、次第に睡眠薬成分の血中での濃度が上昇していきます。そのあとは、肝臓によって分解が進み、睡眠薬の成分の血中濃度が徐々に低下していきます。


このとき、睡眠薬を服用してから、血中濃度が最高値の半分になるまでの時間を「半減期(消失半減期)」と呼びます。


したがって、半減期の短い睡眠薬は作用時間が短く、反対に半減期の長い睡眠薬は作用時間が長いということになります。睡眠薬(ベンゾジアゼピン系)は、作用時間によって大きく以下の4つに分類されます。


1.超短時間作用型(超短時間型)
睡眠薬を摂取後、血中濃度が最大値になるまでの時間が1時間程度と短く、また作用時間が2~4時間ほどの睡眠薬です。そのため、なかなか寝付くことができない入眠障害のある方に使われます。作用時間が短いため、翌朝、眠気やふらつきなど睡眠薬の作用(「持ち越し効果」といいます)が残ることがほとんどありません。


2.短時間作用型(短時間型)
効果が現れるまでの時間が短く、作用時間が5~10時間程度の睡眠薬です。入眠障害のある方、ならびに、一度は眠ったものの途中で目が覚めてしまう中途覚醒の症状がある方に用いられます。持ち越し効果があまり生じることがありません。


3.中間作用型(中間型)
作用時間が約20時間ある睡眠薬です。明け方早くに目が覚めてしまう早朝覚醒の症状がある方に使われます。日中も気持ちを落ち着ける作用が継続するため、不安感の強い人に使われます。作用時間が長いため、持ち越し効果が生じることも少なくありません。


4.長時間作用型(長時間型)
起床後もかなりの時間に渡って薬が作用するものです。日中、抗不安薬として作用するため、うつ病や統合失調症(精神分裂病)など、精神的な疾患があり、それが原因で不眠の症状がある方に用いられます。



このように、睡眠薬は、就寝時の寝つきの悪さを改善することだけをターゲットにしているのではなく、なかなか眠れないこと(入眠障害)を解消するのはもちろんのこと、眠っても途中で目が覚める(中途覚醒)、明け方早くに目が覚める(早朝覚醒)、よく寝た気がしない(熟睡困難)といった、さまざまな不眠の症状を解消することを目的にしています。


それでは、下表に、現在よく使用されている睡眠薬(ベンゾジアゼピン系、ならびに非ベンゾジアゼピン系)について作用時間によるタイプ分けを行い、一般名、商品名、製造会社、系、消失半減期を整理いたします。各製品の詳細については、商品名のリンク先のページをご覧になってください。

作用時間 一般名 商品名 製造販売元 消失
半減期
(時間)
超短時間
作用型
トリアゾラム ハルシオン 大日本住友製薬 ベンゾジアゼピン系 2~4
ゾピクロン アモバン サノフィ・アベンティス シクロピロロン系 4
ゾルピデム酒石酸塩 マイスリー アステラス製薬 イミダゾピリジン系 2
短時間
作用型
エチゾラム デパス 田辺三菱製薬 ベンゾジアゼピン系 6
ブロチゾラム レンドルミン 日本べーリンガー
インゲルハイム
ベンゾジアゼピン系 7
リルマザホン塩酸塩
水和物
リスミー 塩野義製薬 ベンゾジアゼピン系 10
ロルメタゼパム エバミール バイエル薬品 ベンゾジアゼピン系 10
ロラメット ワイス
中間
作用型
ニメタゼパム エリミン 大日本住友製薬 ベンゾジアゼピン系 21
フルニトラゼパム ロヒプノール 中外製薬 ベンゾジアゼピン系 24
サイレース エーザイ
エスタゾラム ユーロジン 武田薬品工業 ベンゾジアゼピン系 24
ニトラゼパム ベンザリン 塩野義製薬 ベンゾジアゼピン系 28
ネルボン 第一三共
長時間
作用型
フルラゼパム塩酸塩
(塩酸フルラゼパム)
ダルメート 共和薬品工業 ベンゾジアゼピン系 65
ベノジール 協和発酵キリン
ハロキサゾラム ソメリン 第一三共 ベンゾジアゼピン系 85
クアゼパム ドラール 久光製薬 ベンゾジアゼピン系 36



睡眠薬は薬の作用によって不眠の症状を和らげるものであり、不眠の原因そのものを解消するものではありません。つまり、睡眠薬自体には、不眠を根本的に治療する働きはありません。


しかし、眠れないことをそのままにしておくことは、精神的にも身体的にもつらいことですし、日常生活にも支障があります。そのため、睡眠薬をうまく利用することで不眠の症状を抑え、生活の質を改善することは非常に有効な手だてです。


それに、睡眠薬を活用することで上手に眠りを確保し、そのうえで、不眠の原因そのものを解消したり、うまく対処する方法を身につけたりすることで、眠れないという思いをすることなく不眠を根本的に治療することが可能です。


もし不眠でお困りでしたら、症状の程度によっては睡眠薬の利用も選択肢のひとつとしてご検討なさってみてください。その際には、もちろん、専門の医師の診断を仰ぐことが必要です。


ただし、眠れないからといって、睡眠薬だけに頼るというのも好ましくありません。たとえば、毎日の生活が不規則であるために眠りのリズムが乱れ、その結果、不眠が生じているのでしたら、なによりも生活を改善することが大切です。


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