ここでは、高齢者が眠れなくなる要因のうち、間接的なものについてご説明いたします。
(高齢者が眠れなくなる直接的な要因(身体的・精神的なもの)については、前ページの「高齢者の不眠の直接的な要因」をご覧になってください。)
高齢の方では、高齢者特有の症状などが、不眠や中途覚醒につながることが多くあります。以下、それぞれについてご説明いたします。
頻尿
レム睡眠時に尿意を催すと簡単に目が覚めてしまい、中途覚醒につながります。
持病
高齢者は、眠れなくなったり眠りの持続を妨げたりする慢性的な病気にかかっていることが多くあります。たとえば、以下のようなものです。
・関節痛や筋肉の痛み : 痛みのため、眠れにくくなってしまいます
・前立腺肥大 : 頻尿になります
・認知症 : 錯乱や暗闇に恐怖を覚える症状(日没症候群と呼ぶ)を伴うこともあります
・うつ病 : 高齢者に多いうつ病は、不眠の原因になります
睡眠障害
加齢とともに多く見られるようになる睡眠障害が不眠の原因になります。高齢者によく見られる睡眠障害には、「睡眠時無呼吸症候群」、「むずむず脚症候群」、「周期性四肢運動障害(睡眠時ミオクローヌス症候群)」があります。とくに、睡眠時無呼吸症候群は、60歳以上の高齢者の約2割に見られるといわれています。
これらの睡眠障害が疑われる場合には、早めに専門の医師の診断を受け、適切な対処を行うことが大切です。
過剰な昼寝
退職で会社に行くことがない、また生活上の刺激が少ないなど、昼寝ができやすい環境にあるため、ついつい日中眠ってしまいがちになります。長い昼寝をすると、夜の寝つきの悪さにつながります。とくに、夕方に寝ると、夜、なかなか寝付けなくなってしまいます。
寝室の環境が適切でない
眠りが浅くなるために、若い頃は気にならなかったようなことが気になるようになります。たとえば、寝具の状態(寝心地の悪さ)、騒音、光などです。
カフェイン摂取
高齢になると、若い時よりも、カフェインの覚醒作用の影響を受けやすくなります。詳しくは、「午後のカフェイン摂取をひかえましょう」をご覧になってください。
薬の服用
年をとると薬の作用が強くなり、悪夢を見たり、眠れなくなったりすることがあります。反対に、過度の眠気に襲われることもあります。現在服用中の薬によって眠りに対して好ましくない影響が生じている場合には、担当の医師に相談することが必要です。
配偶者との死別
配偶者との死別は精神面に非常にダメージが大きく、不眠の原因になることが少なくありません。
以上のように、高齢になるほど眠りを妨げる要因が多くなるのは確かです。しかし、適切な対処を行うことで、睡眠の状態をよくすることは可能です。次の「高齢者の眠りを改善する方法」では、高齢の方の眠りをよくするための方法についてご説明いたします。
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残念ながら必要な情報が見つからなかった方のために、関連書籍をご紹介いたします。これ以外については、「こちら」をご覧になって下さい。
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眠れないお年寄りへのケア 田ヶ谷 浩邦 中央法規出版 2006-08
内容(「BOOK」データベースより) 睡眠障害を専門とする精神科医が、高齢者の不眠について、やさしく、わかりやすく解説します。睡眠にまつわるさまざまな誤解をとき、環境や生活習慣による不眠、病的な不眠、睡眠薬や治療法などについて述べ、質の良い睡眠をとるための具体的なケアを提示します。 |
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