ここでは、高齢者が眠れなくなる要因のうち、直接的なものについてご説明いたします。なお、ここで直接的なものとは、身体的・精神的なものをさしています。
高齢者が眠れなくなる直接的な要因には、以下のようなものがあります。
睡眠の必要量の減少
定年による退職などによって、一般的に高齢になると、若い頃に比べて日中体を動かすことが減る傾向にあります。そのため、消費するエネルギー量が少なくなり、このことで必要とされる睡眠の量が減り、睡眠時間が短くなります。
若年時に比較して一日の睡眠時間が減るのは自然なことです。睡眠時間が短くなっても日常生活において支障がないようでしたら、とくに心配する必要はありません。
一日の最高体温の低下
人間の体温は一日の中で変化し、もっとも低いのは起きる直前です。この頃から次第に体温が上昇し、夜、寝る前にピークを迎えます。そして、これ以降は、体温はだんだんと下がっていきます。
寝るときに体温が下がるのは、体温を下げることでエネルギーの代謝を抑制し、脳を休ませるためです。このときに、人間は眠気を感じます。
ところが、加齢に伴って、1日における最高体温が低くなります。そのため、体温を下げるのに要する時間が短くなり、これがもとで睡眠時間も減少する方向に進みます。
体温の日変動サイクルのズレ
高齢になると、一日の中での体温変化のサイクルが前にずれます(早くなる)。朝、体温が上昇するときに覚醒するのですが、サイクルが前にずれることで体温上昇の時間帯が早まり、朝早くに目が覚めるようになります。
メラトニンの減少
睡眠を促す働きがあるホルモンに「メラトニン」というものがあるのですが、高齢になると、メラトニンの分泌量が減少します。このことにより、夜、眠れにくくなります。
参考までに、メラトニンに関する詳しい説明は、「メラトニンについて」をご覧になってください。
以上が、高齢者が眠れなくなる直接的な要因です。次の「高齢者の不眠の間接的な要因」では、間接的要因についてご説明いたします。
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眠れないお年寄りへのケア 田ヶ谷 浩邦 中央法規出版 2006-08
内容(「BOOK」データベースより) 睡眠障害を専門とする精神科医が、高齢者の不眠について、やさしく、わかりやすく解説します。睡眠にまつわるさまざまな誤解をとき、環境や生活習慣による不眠、病的な不眠、睡眠薬や治療法などについて述べ、質の良い睡眠をとるための具体的なケアを提示します。 |
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