睡眠相後退症候群
ここでは、概日リズム睡眠障害(リズム障害)のうち、「睡眠相後退症候群」について、原因や対処法などを解説いたします。
睡眠相後退症候群は、夜中の遅くに就寝する生活を送った結果、体内時計が後ろにずれ(遅くなり)、 それが固定されてしまうことにより起こります。
体内時計が後ろにずれてしまうことから、深夜1時や2時になっても寝付かれず、
3時になってようやく寝ることができるというような状態になります。結果として、朝起きるのもつらくなります。ひどい場合には、
昼夜が逆転してしまうこともあります。
受験勉強やテレビの深夜番組、パソコンやゲームなどで夜型生活になりやすい学生さんや若い人がかかりやすい睡眠障害です。
現代社会は、昼夜の区別がなくなってきていることから、この環境の影響が大きいと言えます。
とくに、春休みや夏休みなどの長期休暇では遅寝・遅起きの生活になりやすいことから、体内時計が後ろにずれやすく、
この障害が起こりやすい傾向があります。
また、社会人でも、大型連休などでは同じような状況になりやすいです。
朝なかなか起きることができないことから、「やる気がない」「たるんでいる」「怠けている」などと誤解されることもあります。また、
学生さんの登校拒否や社会人の出社拒否の原因になっている場合もあり、本人を含めて、原因をよく見極める必要があります。
夜、なかなか寝付けないことから入眠障害であると考えてしまいそうですが、問題は寝付きにあるのではなく、体内時計のずれにあります。
対処していく上で、このことを理解しておくことは大切です。
睡眠相後退症候群の方は、無理に早く寝ようとしても体内時計が遅れたままの状態では、簡単に寝付くことができません。
ただ、基本的に生活習慣から引き起こされているものなので、原因が分かれば、比較的簡単に対処することができます。
<睡眠相後退症候群の対処法>
①光治療(ライトセラピー)
毎朝、少しでも早く起きて、2,000~10,000ルクスの明るい光を浴びるという方法です (オフィスの照明は200~500ルクス程度、曇天の空が約10,000ルクス)。このことで、脳の視床下部に光の刺激を与え、 体内時計を早め、ずれを修正することができます。
学生さんの長期休暇中の遅寝・遅起きによる症状の場合、この光治療を施すことにより、9割以上の人が早期に治療できるそうです。
光治療は、専用の機械があれば家庭でも行うことができます。詳しくは、 「乱れた体内時計を回復する方法」をご覧ください。
②時間療法
体内時計のリズムを修正するために、就寝時刻を徐々に後ろにずらしていくという方法です。最終的に望ましい時刻にて就寝・ 起床できるようになったら、その状態を維持できるように生活スタイルをコントロールすることが必要です。
自分で厳密に就寝時刻を調整することが難しく、また根気のいる方法であることから、専門医の指導のもとに行うことが大切です。
なお、就寝時刻を後ろにずらしていくのは、睡眠相後退症候群の方は、就寝時刻を前にずらしても入眠することが難しいためです。
③メラトニン療法
メラトニンの投与によって、体内時計を少し早め、就寝時刻を少しずつ早めていくというものです。 専門医の指導のもとに行う必要があります。
④ビタミンB12の投与
体内時計の周期が生まれつき25時間以上と長い人や、リズムを調整する機能が弱い人がおられます。そのような方は、 ビタミンB12の投与が効果があるようです。
以下に、睡眠相後退症候群の患者さんが避けるべきものを列挙いたします。いずれも健康問題に関わるものですから、 十分な注意が必要となります。
<睡眠相後退症候群の患者さんが避けるべきこと>
○カフェイン
カフェインの覚醒作用により、ますます寝付けなくなってしまいます。また、朝、カフェインの力を借りて無理に目覚めようとすると、 カフェイン中毒になることも考えられます。
カフェインの睡眠に与える影響については、 「午後のカフェイン摂取をひかえましょう」もご参照願います。
○タバコ
カフェインを避けるべきであるのと同様の理由です。ニコチン中毒を引き起こすことが懸念されます。
タバコの睡眠に与える影響については、 「寝る前のタバコは我慢しましょう」も併せてご参照願います。
○飲酒
寝付きをよくしようとアルコールに頼ると、アルコール依存症になりかねません。
詳細は、「寝酒・ ナイトキャップは適量に」をご参照願います。
不眠症や、睡眠時無呼吸症などの睡眠障害を診療している都道府県別 病院・クリニック一覧です。→ 「不眠症、睡眠障害、睡眠時無呼吸症 病院・クリニック一覧」 |
(管理用)